稲架かけの後はどうしたらいい? みんなが知らないお米の作業を詳しく説明します

みなさん、こんにちは。岐阜県郡上市でオーガニックな農家民宿『くらしの宿Cocoro』を営むただっちです。

※この記事は2019年11月に公開した記事「みんなが知らないお米の作業。そして新米イセヒカリ、販売開始でーす!」を、文章の加筆修正を行い、2022年12月に再公開したものです。

郡上は日に日に寒さが厳しくなってきました。去年まで住んでいた岐阜県揖斐川町というところは、この時期の最低気温は6℃くらいだったかな(それでもしっかり寒かったけど)。しかし今日の郡上は、驚きの0.4℃! 結露よけにかけておいたブルーシートに、見事に氷が張っていました。

お、同じ岐阜県なのに! なんだこの違いは!? 人も野菜もビックリですよ。

さてさて、農家がつたないブログを始めて1ヶ月が過ぎました。ってもう1ヶ月も経ったのか〜。早いな〜。農作業が忙しくなるとなかなか更新できないな〜。もうちょっと頑張らないとな〜。なんてちょっと焦りつつ、でもマイペースで行こうと決意するワタクシです。

でもみなさんに声を大にしてお伝えしたいことがあるんですよ❗

先日、郡上で初めてのお米が収穫できましたー!!

毎年のことなんですけど、お米が取れると農家って本当に嬉しいんですよ。何よりも、これでまた1年間ご飯が食べられるんだ、という安堵が一番大きいです。私たちは野菜やお米を買うことがほとんどないので、お米が取れないと翌年食べるものがなくなってしまうのです…。

というのはやや大げさですけど、毎年それくらいの気持ちでお米を育てています。どんな風にお米を育てているのか。田植えから稲刈りまでの流れは、コチラの記事をご覧ください。

この記事では稲刈りをして稲架(はさ)かけをしたところで作業が終わっているのですが、その後にはこんな作業が待っています。

ちなみに手植えをするにはどうしたらいいのか、という記事はコチラです。

実は稲刈りまでは手順的にはスムーズなんですが、稲架かけ後の作業って、みなさんあまりご存じないですよね。きっと稲架にかけたら満足しちゃうからだな(笑) でも自分で田んぼを育てようと思うと、当然ですがここからの作業もしっかり押さえておく必要があります。

では順番にご説明しますね。

手順その1 脱穀

脱穀とは、稲架かけして乾燥させたモミをワラから外す作業です。

稲架かけは晴天が続けば10日〜2週間程で充分なのですが、今年は雨が多く3週間経っても乾燥が不十分でした。秋に雨がこんなに続くのも、本当はとてもおかしなことなんですよ。毎年異常気象の連続だなぁ。この先どうなってしまうんだろう、とよく不安になります。

気を取り直して。脱穀はこんな感じで行います。「大竹式足踏み脱穀機」という道具です。

足で踏むと胴が回転します。そこへ稲を差し込むとモミが外れるのですね

この足踏み脱穀機は大豆の脱粒の時にも大活躍します! 一家に一台はぜひ欲しいところです(笑)

100%人力なのでかなり大変です。足でペダルを踏んで、手で稲を持って、回転する胴に差し込んでいきます。手と足の動きがバラバラなので、初心者さんはちょっと戸惑います。でもいつの間にかみなさん、ちゃんと出来るようになるんですね〜。

お米も大豆と同様、脱穀する時にけっこうほこりが出ます。なのでマスクをしている人が多いですね。

同時進行で機械も使います。これは「ハーベスタ」という機械。

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「ハーベスタ」って収穫って意味です。名は体を表す!

このハーベスタ、今ではコンバインに取って代わられて、ほとんど目にすることはありません。でも稲架かけをやっている人には必需品です。昭和40年〜50年くらいに活躍した機械です。今でも中古農機具販売店などで数万円で手に入れることができます。

余談ですが、この昭和40〜50年というのは、農作業において機械と人力のちょうどいいバランスが取れていた

まさに黄金期!

なのではないかと、ワタクシ個人的には思っています。なのでワタクシたちが目指す農の姿も、この時期のものと似通っています。

100%人力ではなく。

全てを機械に頼るのでもなく。

人と機械がお互いを補い合いながら農に関わることができた時代。それが昭和40〜50年かなぁと。ちょっとノスタルジーかもしれませんがね。

この後コンバインが出てきて、日本は農業の大規模化、そして農薬と化成肥料を大量に使ってお米を大量生産し、大量消費の時代へと舵を切っていくことになります。

手順その2 選別

脱穀した後は、モミとゴミを分けるために選別をします。

これが脱穀した直後。まずは目の粗い篩(ふるい)にかけて、ワラなどの長いゴミをざっと取り除きます。

そして選別機に投入! これ「唐箕(とうみ)」という道具です。

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唐箕は本当に優れもの。あっという間に選別してくれます

写真では見えないんですが、反対側にハンドルが付いていて、それをグルグル回すと風が発生します。その風で軽いゴミを飛ばして、重いモミはそのまま下に落ちる、という仕組みです。

仕組みは単純なんですが、本当にスゴい道具です! 驚くことに、中の仕切り板の角度を変えることで、お米、大豆、小豆、ゴマ、なんでもござれ! たった一台でこの対応の幅の広さ。ビバ、道具ですよ!

名前から察するに唐(中国)から伝わったんでしょうね。当時はきっと一大センセーションを巻き起こしたに違いない。発明した人天才過ぎるぜ…、といつも感心しながら唐箕を使っています。

この唐箕にかける前のゴミが入っているものと、唐箕にかけた後のものを見比べると、一目瞭然です。初めて見る人はこの選別能力の高さに、みなさんビックリします。

ちなみに先ほど出てきたハーベスタは、脱穀と選別を一気にやってくれます。人力で足踏み脱穀機と唐箕を使った場合、モミを30キロ取るのに1時間半くらいかかりますが、ハーベスタを使うとわずか10分ほどで済んじゃいます。そのスピード差、約10倍かぁ。う〜む、機械恐るべし!

この辺りは規模や作業に関わる人数などを考慮して、どんな道具や機械を使うかを判断するといいですね。

手順その3 籾すり

脱穀したお米にはまだモミという硬い殻が付いているので、これを外します。籾すりと言います。

籾すりは現代では人力では難しいので、機械を使った作業になります。昔は泥臼(どろうす)という道具で籾すりをしていたのですが、今では実用できるレベルのものはほとんど残っていません。

籾殻[モミガラ]を取り除くために使われた道具。米の生産が重要な位置を占めている東洋では、石磨臼[イシスリウス]からもみすり専用の道具が発達した。中国では隋[ズイ]・唐[トウ]時代に承[ロウ]と称する道具が存在したといわれている。竹を編んで円形の囲いをつくり、それに粘土に塩を混ぜて詰め竹や木で臼の目を形成する。目のパターンは8分画で、回転方向は反時計方向であることは石磨臼と同じである。日本には寛永年間(1624‐44)に伝わり、しだいに普及していった。地方により材料の経済性に差があり、竹を節約したり竹を全くつかわないもの、木製のものなど形態もさまざまである。土を詰めるので土臼[トウス/ドウス]という。

水巻町歴史資料館より https://www.town.mizumaki.lg.jp/museum/index.html

その代わりにこんな機械を使います。「オータケ籾すり機」です。

残念ながら機械に頼っておりまする

ここで、ん? オータケ? と気になったアナタは鋭い❗

先ほどご紹介した「足踏み脱穀機」。時代は違えど、あの道具を作っているのと同じ会社なんですね〜。イヤ〜、ホント今も昔も大竹さんにはお世話になってるんだなぁと、感謝しかありません。

話を戻して、ここでようやく玄米になります! 

籾すりが終わり、金色の玄米がザザーッと袋に流れ出てくるのを見て、ようやくこれで今年もお米が食べれるなぁと安心するのです。

手順その4 収穫祭

そして収穫後、最大のイベントが収穫祭! これは農家として、イヤ、人として外すわけにはいきません!

自然の恵みを神さまに感謝して、田んぼに関わってくれたみんなでご飯をいただきます。実のところ、神さまでも仏さまでも、なんなら太陽さまでも田んぼさまでも構わないのですが、「恵み」は自分たちの努力だけでもたらされた訳ではない、というところが気持ちの上でとても大事ですね。

ワタクシたちに恵みをもたらしてくれるちょっと大きな存在を感じ、感謝を捧げ、ご飯をいただく。自然に沿った農をやってると、この「恵み」と「感謝」のつながりが、ごく自然な感覚として理解できるようになります。

とか言いながら、毎年お酒を飲んではダメダメな人になっているワタクシですけどね…

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ダメダメになったワタクシで遊ぶ子どもたち。親はちょっと引き気味です

そりゃー子どもも乗るわ!

一年のプレッシャーから解放された日なので多めに見てやってください。

手順その5 そして来年へ

こんな感じでお米の、そしてワタクシの一年が終わっていきます。

収穫祭の途中からは、いつも寂しい気持ちになります…。

でも翌年の3月からはまた田んぼの準備が始まるので、本当にほぼ一年中、お米に関わっていますね。でも機械がなかった頃は、もっと大変だったんです。新米が食べられるのは年が明けてから、なんて話を聞いたこともあります。

先ほども言いましたが、ワタクシたちがやっている農はだいたい昭和40〜50年くらいのエネルギー投入量です。それ以降は機械の大型化が進んで、人間の役割がどんどん機械に取って代わられてしまいます。でもワタクシたちは時には機械の力も借りつつ、やっぱり基本的には自分たちの力で農に関わっていきたいと思っているのです。

そしてそれが持続可能な農の姿だと確信しています。

ま、機械を使って短時間でササッと済ませるのも、経営的にはアリなのですが(というか、むしろそれをしないと農業なんて儲からないしね…)、ワタクシたちの場合は農のある「暮らし」ですからね。できるだけゆっくりと、楽しさもしんどさもじっくりと味わいながら、日々を過ごしていきたい。

そんな風に育てたお米を、『くらしの宿Cocoro』では愛農かまどというかまどで炊いて召し上がっていただきます。かまどで炊いたご飯は本当に美味しいんですよ〜! この美味しさは言葉ではとうてい言い表せないので、ぜひ味わってくださーい。

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さっそく新米を炊いてみました! 

郡上で育てた初めてのイセヒカリ。気になるお味は…、やっぱり美味〜い! ってそれしかボキャブラリーないんかい(笑)

ぜひ『くらしの宿Cocoro』自慢のお米を食べに来てください。

お待ちしてまーす♪

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