[※この記事は2021年9月に書いた記事「うちのお米は◯◯い!」を一部修正加筆し、2024年10月に再度公開したものです]
みなさん、こんにちは。岐阜県郡上市にあるオーガニックな農家民宿『くらしの宿Cocoro』のただっちです。
今年も猛暑、日照り、大雨とホントにいろんなことがありましたが、田んぼのお米たちは全力で頑張ってくれました!
今年は田植えを今までよりも2週間ほど早めに行いました。その結果、出穂は例年に比べて1週間ほど早まりました。
ちなみに稲の穂が出ることを「出穂」と書いて「しゅっすい」と読みます。これは今度のテストに出るので(何のテストだ?)、よーく覚えておいて下さいね。
昨年は8月に雨が多くて、出穂がかなり遅れたんですよね。原因はもちろんお天気が悪かったからなのですが、でもどうやらそれだけではなさそうです。
お米は出穂して2〜3日すると開花します。その後受粉をするのですが、雨だと花粉が流れてしまうから受粉がうまくいかないのですね。しかもお米は1日の開花時間がたったの2時間ほどしかありません。
なのでひょっとしたら意識的に(植物に意識があると仮定してですが)、出穂を遅らせた可能性があるのかもしれませんよ。
今回はそんな『くらしの宿Cocoro』のお米について、ちょっとマニアックなお話をしたいと思います。
まずは育て方の説明から始めましょう。
お米はこうやって育てています
『くらしの宿Cocoro』のお米は全て無肥料・無農薬で苗から育てています。品種は「イセヒカリ」と言います。もちろんタネも毎年採り続けています。
まだ寒さが残る春先、宿の前に小さなプールをこしらえて、40〜45日間ほどそこで苗を育てます。
6月になり、田んぼの水が充分に温まったらいよいよ田植えです。7〜800平方メートルの田んぼに1本ずつ手植えします。お客さまがいらっしゃる時は一緒に田植えを体験してもらったりもします。
夏の間、スクスクと育つお米たち。人間にできることは祈ることくらいです。
そして秋。収穫です! まずはバインダーという機械で稲を刈って
稲架(はさ)にかけて天日で乾燥させます。この後は脱穀してお終いですが、お米を育てるのは3月から10月までかかるので、なかなかの長丁場です。
お客さまがお米を召し上がる量、ヤバいよね…
『くらしの宿Cocoro』にご宿泊されたことがあるかたなら分かっていただけると思いますが、お客さまがお米を召し上がる量が尋常ではありません…。
何を大げさな、と思われるかもしれませんが、実際とにかくもうスゴいんです。
過去には大人2名、子どもちゃん1名のご家族で、晩ごはんと翌日の朝ご飯で7合を完食したツワモノもいらっしゃいます。子どもちゃんが中学生くらいだと、1度に1升以上炊くことも珍しくありません。
みなさん、ちょっと考えてみて下さいな。ひと家族で2食で7合とか、あり得ます? 1食につき1人1合以上の計算ですよ? 育ち盛りの子どもならいざ知らず、普通の大人はそんなにお米を食べません笑
ちなみにですね、日本人が1年間に食べるお米の量ってご存じでしょうか? 調べてみると、農水省の一番新しいデータでは50キロ強となっていますね。
https://www.maff.go.jp/j/heya/kodomo_sodan/0405/05.html
ということは365日で割ると、1日あたり約130グラム。
1合が150グラムなので、平均すると1日1合も食べていないんですね。でもお客さまは1食で1合以上ペロリと召し上がっちゃう。そんなことができてしまう理由をワタクシなりにちょっと考えてみました。
「うちの米は○○い」ーそりゃ当たり前だよ、な1つ目の理由
まず1番シンプルに考えられるのは「うちのお米はうまい」です。
でもこれはまぁ、何のひねりもないし誰でも思いつきますわね。笑点だったら座布団取られるレベルです。
おらが米自慢ではないんですけど、無肥料・無農薬で育てられたお米って、それだけでとっても美味しいんです。炊いている間の匂いからして全然違います。あの炊飯器から立ち上る、独特のモワッとした匂いが全くしません。アレって実は化成肥料や未熟な有機肥料(畜糞)の匂いなんですよね。
そして『くらしの宿Cocoro』ではそんなお米を土鍋、もしくは「愛農かまど」というかまどで炊いています。
土鍋やかまどで炊くと、お米が持つ味を最大に引き出すことができます。
控えめに言って、むちゃくちゃ美味しいです。その証拠に最近いろんな有名家電メーカーの高級炊飯ジャーが宣伝してますよね。「かまど炊き」やら「おどり炊き」やらって。共通するのは強火で一気に炊き上げるというイメージですよ。でも残念ながらどう頑張っても電気ではムリなんだよなー。
ただでさえ美味しいお米をかまどで炊く。そりゃー美味しくない理由が見つかりません。
「うちの米は○○い」ーえっ? 意外な2つ目の理由
その次に考えられるのは、「うちのお米はかたい」です。
でも硬いというとちょっと違うんだよなぁ。「コシがある」という方がイメージがつかめるかもしれません。
日本で最も多く食べられているお米と言えば、みなさんごぞんじ「コシヒカリ」。ですがコシヒカリは数あるお米の中でも、かなり柔らかく、そして糖分が多い部類に入ります。柔らかくて、そして甘い。
でもイセヒカリは違います。みなさんもたぶん一口噛んだ瞬間に、コシヒカリとの違いが分かります。シャキシャキとコシがあって、しっかりとした味を感じられ、そして甘味は少なめ。コシヒカリとは対局にあるようなお米です。
このイセヒカリの特性が食べ疲れをせず、お米をたくさん食べられる理由かもしれません。
ちょっと回り道を
余談ですが『くらしの宿Cocoro』では、お米をモミの状態で常温保存しています。
普通の旅館ですと良くて玄米、大抵は白米を低温保存していると思います。でもお米って、モミ→玄米→白米の順で鮮度が落ちるスピードが上がっていくんですよ。白米なんて精米して1週間もすれば、かなり酸化が進んでヌカ臭くなってきます。
『くらしの宿Cocoro』ではモミで保存しておいて、お客さまのご宿泊予定を考えつつ籾すりをして
その後すかさず精米! という手順を踏んでいます。
モミで保存するのは場所を取られるし、籾すりも精米もそれぞれ手間と時間がめちゃくちゃかかりますけどね…。ホントにお米の味が全然違いますから。ここは農家のプライドをかけておろそかにする訳にはいきません。
「うちの米は○○い」ーまさかの3つ目の理由
3つ目の理由は「うちのお米はくろい!」です。
「はぁ? アンタなに言ってんの?」的な発言ですが、実際うちのお米は黒いんですよ…。いや、さすがに真っ黒ではないですよ。写真で見るとこんな感じ。
どうです? よーく見ると、お米に黒い粒がありませんか?
実はこれ、カメムシが吸った跡なんですよね。受粉してできたばかりのお米は、固体というよりはミルクのような液体の状態です。それがどうやら美味しいらしくて、カメムシがせっせと吸うのですね。
そうするとお米に黒い点ができます。これが「斑点米」と呼ばれる米で、農家からそれはそれは蛇蝎のごとく嫌われます。
どうして農家から嫌われるかというと、斑点米があるとお米の値段が下がるからです。味は全くと言い切っていいほど変わりません(※ただし斑点米だけを食べると、苦くてとても食べられたもんじゃありませんので止めておきましょう。経験者談)。
このカメムシによる斑点米を防ぐために、農薬がこれでもかこれでもかと何度も使われます。現在主流なのは「ネオニコチノイド系」という農薬です。
トンデモな一説によると農薬は適切な量であれば危険ではないそうですが、その農薬をまく時間帯は小学生の通学時間を避け、日中は洗濯物を外に干さないように、という勧告がなされます。そんなとっても安全な農薬ですから、当然田んぼにいるいろんな虫や小動物たちは、ほぼ全滅…くらいの大きなダメージをくらいます。
でも人間には安全なんだよ!
って、そんな訳あるかい。そりゃーもちろん人にも影響が出ますよ。
人体には影響はない、なんてこれまたトンデモ説もありますが…。普通に自分の頭で物事を考えられる人なら、それがウソか本当か分かりますよね。ネオニコの危険性についてお伝えしている動画を貼り付けておきます。ネオニコ研究の第一人者、木村ー黒田純子先生のインタビューです。
『くらしの宿Cocoro』では、生き物にそんな甚大な被害を与えてまで斑点を消したいとは思いません。
ということをお伝えする機会を持つために、斑点のあるお米をお客さまに提供しています。これでお米がマズけりゃ立場ないけどさ。ありがたいことに、みなさんから美味しいと言っていただけるので、これでいいのだと自信を持ってオススメしています。
ま、そんな宿が日本のどこかに1軒くらいあってもいいじゃないか。
そんな『くらしの宿Cocoro』でしか食べられない、うまくて・かたくて・くろい斑点があるお米「イセヒカリ」(ううっ、ちっとも宣伝になっていない気がする…)。ご宿泊のかたは楽しみにしていてくださいね!
毎年10月から売り切れるまでは、宿でお米の販売もしていますよ! お値段は玄米1キロ900円です。今年は収量が少なかったので、宿以外での販売はいたしません。
うまくて・かたくて・くろい斑点があるお米(しつこいぞ)が食べてみたいかたは、ぜひ『くらしの宿Cocoro』へお越しくださーい。待ってまーす。
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