みなさん、こんにちは。岐阜県郡上市でオーガニックな農家民宿『くらしの宿Cocoro』を営むただっちです。
今までにこのブログの読者さんで、移住を考えているというかたに何度もお目にかかったのですが、ほとんどのかたが
「どこかに良い古民家ないですかね?」
とおっしゃいます。
実はワタクシは自他共に認める古民家マニアでして、あちこち行ってはいろんな古民家を(勝手に、そして自分の心の中に)ストックしています。実際にワタクシたちが紹介した古民家に移住した友人もいます。
せっかく移住するなら古民家に住みたいけど、なかなかいい物件がみつからない、というケースがここ郡上でもよくあるんですね。良い古民家が見つからなかったから仕方なく新築で家を建てました、なんてウソみたいな本当の話もあるくらいです。
ま、全国を見渡してもそんなにたくさんはいないであろう古民家フェチのみなさんに声を大にして言いますよ。
古民家くらし、楽しいよー♡
なんと言ってもその地域に根ざした伝統工法で建てられた家は、季節に応じて快適です! 一般的には古民家は気密性が低いし寒いし不便だし、だからダメだね〜なんて思われています。でも不便な箇所を現代的にリノベーションをして、床や壁を断熱したり、導線を引き直したり、すきま風をふさいだりすれば、そんなことは全くありません。
確かに中にはどうしようもないくらいに傷んでいる古民家もありますけどね。そういう家は手をかけてもそれほど快適にはならないので、こんなものと割り切るか、最初からある程度コンディションがいい家を探すのがいいと思います。
今回はそんな古民家への引っ越しを考えている方に、これだけは引っ越し前にやっておいた方がいいよ、というアドバイスです。
古民家を借りるときに困るもの2選!
古民家を借りる際に、とっても困るものが2つあります。1つはお仏壇、そしてもう1つがゴミです。どちらも家主さんが責任を持って処分してくれれば何の問題もないんですが、そんなありがたい話はそう転がっていません。よくあるのが
「家は貸してあげるから、自分たちで片付けて」
というやつです。これはそもそも論を口の中で唱えていても始まりません。そういうもんだ、という現実的なところから始めましょう。
まずお仏壇は専門の業者さん(ワタクシはお仏壇屋さんにお願いしました)に引き取ってもらうしかありません。オレは神仏なぞ信じぬ恐れぬ、という剛毅なかたはご自分で捨てられてもいいのかもですが、さすがにお仏壇はワタクシでもちょっと引きます…。ということで、お仏壇は業者さんに素早くパスしましょう。
大きいものなので処分に費用がかかりますが、これは必要経費ということで目をつぶるしかありません。程度が良ければ部品取りに使えるので、無料で引き取ってくれる業者さんもいるみたいです。
次にゴミ。古民家って、以前に住んでいらっしゃったかたの荷物がそのまま置いてあったり、親戚中の荷物置き場になってたりするんですね。ホントね、人に貸す前にちゃんと片付けておいてくれよ、って話なんですが。ここで先ほどの殺し文句
「家は貸してあげるから、自分たちで片付けてね」
ですよ。こっちは引っ越したい気持ちでいっぱいだから、ついつい「ハイハイ、自分たちでやりまーす!」って軽〜く引き受けちゃうんですよね(笑)
でもコレが大失敗のもとです。
ワタクシたちは古民家へ2度引っ越した経験があるのですが、2回とも自分たちでゴミの処分をしました。ええ、ええ、思いっきり失敗してますね…。
ホントに辛いゴミ処理作業
1度目の引っ越し先はこれって、…ひょっとしてゴミ屋敷ってやつか?
くらいゴミだらけの家だったので、片付けがとーっても大変でした。もちろんお仏壇もあったし、台所の引き出しを開けたら、天ぷら鍋に油がそのまま入っていたくらいです。他にもここには書けないようなものが多数出てきました。でもどうしてもその近くで農業がやりたかったから、その家を借りるしかなかったんですよね〜。
これだけひどいんだからいっそのこと業者さんに頼もうか、なんて甘い誘惑がチラッと頭をかすめたりもしたんですが、業者に頼むとそれだけでウン十万円。ううっ、今から農業を始めようというワタクシたちにそんな余裕はございません!
ということで片道45分くらいかけて、引っ越す前に何度も何度もゴミの片付けに通いました。そして軽トラいっぱいにゴミを積んでは家とゴミ処理場の往復…。覚悟していたとはいえ、何の生産性も達成感もないこの作業。けっこう心が折れます…。オマケに財布もみるみる軽くなります…。
ま、業者を頼むよりはずっとリーズナブルなんですが、人が出したゴミをなんでオレが自腹を切って処分せにゃならんのだ! と自分のアホさに天を仰いだこともあります。
引っ越してからも何度か粗大ゴミを捨て(そういや倉庫には車やオートバイまであった!)、それがようやくキレイになった時には引っ越してから3年以上も経っていました。家中がスッキリして、とても心が軽くなったのを覚えています。
2度目の引っ越しは相方のおじいさんの家ということもあり、最初から自分たちでゴミの処理をしようと計画していたのですが、家とゴミ処理場の往復に、やっぱり何度か心が折れました…。
本音を言うとね、お仏壇もゴミも家主さんにお願いするのが本筋ですよ。
でもそんな風にはうまくいきません。家主がどうしてもやらないと言うのであれば、そこから交渉開始です。くれぐれも「自分でやります」的な安請け合いはしない方がいいです。
処分費を出してくれないなら月々の家賃を下げてもらうとか、その浮いた分で業者に頼むとか、または自治体の補助金を使うとか。いろいろ工夫して、少しでも自分が楽できるように、そして引っ越し前に心が折れてしまわないよう手を打ってくださいね。
ただこの家の場合は、自分たちでゴミを処分しなくては何も始まらない状況でした。住めないし、『くらしの宿Cocoro』も始められないし、お客さんにも来てもらえない。ということでくじける心を支えながら最後まで走り抜けましたよ。
ゴミの処理って、それを使っていた人の人生をふと考えてしまったり、これはまだ使えるのにな〜とか、捨ててしまうけどゴメンね〜とか、いろんな感情が湧いてくるんですよね。そんな感情を押し殺しながらの単純作業なので、精神的にちょっとしんどいし、余計に心が折れちゃうんでしょうね。
余談ですが、タンスの引き出しからへそくりが出てくる、みたいな話は都市伝説の一種だと思ってください。それは家主さんが事前にしっかり回収してますので(笑)
ゴミ界のラスボスはこいつだ!
でもゴミは果てしなく続きます。そんな感傷や妄想に浸っているヒマはありません。そしてもっとも大変だったのは、何を隠そう(隠してないけど)
農薬の処理!!
でございます。
実はゴミ界のラスボス、ゴミの中のゴミ、一番処理に困るのが「農薬」なのですね。
古民家というのは、だいたいが農業を営んでいた人が住んでいた家なのです。昔は今より農家が多かったから、当然ですよね。そしてその家に使われなかった何十年も前の農薬がそのまま残っている、というのは非常によくあるケース、というかあって当たり前くらいのレベルなんです。
で、家にゴミがいっぱいあるような人は、残念ながら農薬もゴッソリため込んでいます。
しかしこの農薬の処理が、想像以上に大変なのですよ。その辺にポイッと、という訳には絶対いきません(捕まります)。かといってゴミの日にも出せません。じゃあこれを一体どうしたらいいのか。ってことで調べてみました。
どんな風に処理をしているのか?
農薬を処分する大変さはですね、まずもって一般人には農薬を処理できる機会がほとんどない。これに尽きます。
この辺りの最終処分場がどこなのかは忘れましたが(荘川とか高山のほうだったかな)、引き受けの窓口はJAです。しかもその辺のJAで随時引き受けてくれる訳ではなく、特定のJAでたいていは年に1回、多くて年2回です。そしてその先の流れはこんな感じ。
- ワタクシがJAに持っていく
↓ - 業者が中間処理施設へ運ぶ
↓ - 中間処理(焼却や中和、凝固など)
↓ - 業者が最終処分場へ運ぶ
↓ - 最終処分(たぶん埋め立て)
最終処分までに2回も輸送するんですね。つまり処分だけではなく、輸送にもコストがかかるのですね。
処理費用は一体どれくらいなのか?
もちろん処理にかかる手間は大変なので、処理費用は粗大ゴミの比ではありません。ちなみにうちの場合ですと、処理費の見積もりはな、なんと
超ビックリ価格です! こういうのを破格と言うんでしょうか…。価格破壊してくれちゃって全然構わないんですが、そんな風はこの業界には吹きそうにないですね。
そもそもなんでこんなに処理費用がバカ高いんでしょうか? 処理施設が少ないから業者の言い値が通っている、という面も確かにあるでしょうが、内訳を見てみるとどうやらそれだけではなさそうです。
通常の農薬の1キロあたりの処理費用は780円くらいです(ダイオキシンだと一気に上がって4,000円くらい)。その内訳を見ると、中間処理と最終処分費が合わせて230円程度、輸送費が550円です。その差、なんと2倍以上です。
大した距離でもないのに、運賃ってそんなに高くなる? なんだかここにヒエラルキーというか、搾取の構造を感じるのはワタクシだけでしょうか? どう考えても処理の方がキケンだし、コストもかかるし、大変だと思うのですが…。
オマケにビックリしたのは農薬の中にダイオキシンがあったこと。
ダイオキシンって、現在の認識では猛毒ですよね…。そんなものを農薬としてまいていた時代が実際にあったんですね。ちなみにその昔は水銀も農薬としてまかれていたんですよ。稲の「イモチ病」にまいていました。こちらに詳しく載っています。
https://www.env.go.jp/chemi/tmms/husigi/hg_husigi_19.pdf
しかしまぁ、ただただ恐ろしい。ダイオキシンも水銀も、今まいたら問答無用で逮捕されるシロモノです。それを農薬ってねぇ。
もっと恐ろしいのは、これが昔はひどかったんだね、という話ではないという点です。今でも有名なところではグリホサートやらネオニコチノイドといった、とても毒性が高く、また環境への負荷も高いと科学的に証明されている毒物が、農薬として認可されています。農水省は農薬会社の資料をうのみにして、そして内外からの圧力に屈して、安全だなんて言ってますけどね。
何十年後かに「あの時代はグリホサートを農薬だってまいてたんだってよ」「マジ狂っとる」なんて会話がされる時代が来ないとも限らないですよ。しっかり未来のことを見据えてお仕事しましょうね。
とはいえ仕方なくJAに持っていきました
しかし他に方法がないんだから仕方がない。ということでJAに持ち込みましたが…。
まずワタクシを出迎えてくれたJAの職員さんにビックリです。防塵マスクに防護服に長靴。バイオハザードか? くらいの厳重な装備で丁重にお出迎えしてくださいました。
ん〜、何かおかしくね?
もう入り口の時点でワタクシの違和感センサーは点滅しまくりですよ。
そもそもこの農薬は相方のおじいさんが、当のJAから買ったものです。そして彼らがそれを販売した時、そんな格好は絶対にしていなかったはず(見てないけどさ)。それどころか普通に営業車に乗せて、普通に売りに来てますよね。今でもJAに行けば店舗内にたくさんの農薬が置かれていますが、店内で防護服を来ている人なんて見たことないですよ。
売るときはホイホイ売って、処分になるといきなりバイオハザードかよ…。
なんなんでしょう、このダブルスタンダード?
農薬ってキケンなの? 安全なの? どっちなの?
たまにはマジメに考えてみる
ワタクシたちは無肥料・無農薬の自然栽培を営む農家ですので、当然ですが農薬は毒でありキケンであるという認識を持っています。
でも販売する人たちはいつも「用法を守れば安全です」とお題目のように唱えています。まいても安全、農作物も安全、川に流れても安全。野菜やお米への残留もある程度まで(それも結構なレベルまで)認められているし、通学途中の小学生がいても安全だからお構いなしにまいています。
むしろ「こんな安全なものをキケンと言うアナタの方がおかしいんですよ!」と変人認定されるくらいの勢いです。
なのに防護服?
ホントはJAの職員さんも、農薬は怖いものだって知ってるんだね。毒だと認識してたんだね。
農薬を取り巻くみなさんの本音と建前がよーく分かった、農薬処理の一件でした。
まとめます
農薬方面へ脱線しやや暴走いたしましたが、本線はコチラです。
古民家への引っ越しをお考えのみなさんへワタクシからのアドバイスです!
- お仏壇とゴミの処分は引っ越し前にお済ませください
- まずは家主に相談して、それがダメなら交渉に入りましょう
- 農薬の処理には、充分に気をつけて下さい
- JAに電話して、農薬引き取り日をあらかじめ調べておくことを強くオススメします!
みなさん、ハッピーな古民家暮らしを楽しんでくださいね〜。古民家がどんなものなのか体験してみたい方は『くらしの宿Cocoro』にぜひ泊まりに来てくださーい。
お待ちしてまーす♪
[この記事は2019年12月に公開した「【大事だよ】古民家へ引っ越す前にこれだけはやっておこう!」に、加筆修正を行い、2023年2月に再度公開したものです]
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