こんにちは。岐阜県郡上市でオーガニックな農家民宿『くらしの宿Cocoro』を営むただっちです。
つい先日のことになりますが、化学物質過敏症のお客さまにお泊まりいただきました。宿を開業してなんともう早や5年目に突入いたしまして、年に何組かのアレルギーをお持ちの方や、過敏症のお客さまがいらっしゃいます。幸いなことに、今まで宿泊いただいたお客さまが調子を崩されたことはありません。
今回は『くらしの宿Cocoro』の今までの取り組みや、化学物質過敏症お客さまを実際にお迎えして思ったこと、ワタクシたちが普段から気をつけていること、そして宿の現状などをお伝えしたいと思います。
衣食住は大事だよ
『くらしの宿Cocoro』を立ち上げる前に、ワタクシたちの念頭には「どんなかたにでも安心してお泊まりいただける宿」というコンセプトがありました。
ワタクシたちはもともと無肥料・無農薬の自然栽培を続けてきた農家です。そんな農家ですので当然、化成肥料や農薬などの化学物質や食品の添加物などには以前から気をつけてきました。
ですからそれと全く同じ感覚で『くらしの宿Cocoro』のリノベーションに使う資材はできるだけ自然素材、できればオーガニックなもので、とずっと考えていました。
「衣食住」の食はある程度のレベルまで実践できてきたので、次は住だ! と思ったわけです。
とは言え、それまでは建築資材なんて扱ったことがなかったので、使いたい資材をその都度一つずつ詳しく調べる、というなかなか手間のかかる作業を行いました。
そして分かったことは
建築資材ってけっこうグレーなんだね…
という残念な事実です。
そもそもの話をすると(ワタクシは法律上の理由だと解釈していますが)、建築資材って内容成分が明示されていないことが多いのです。食の世界では成分が公開されていないことなんて、まずないですよね(たまに偽装はありますが…)。
そして「自然素材」「無添加」などといかにも雰囲気よさげに書かれていても、メーカーに電話をして突っ込んで聞いてみると、実は化学物質が含まれているということが何度かありました。
例えばホームセンターなどでよく見る塗りやすい練りタイプの漆喰。DIYで使われる方も多いと思いますが、あれにもたいてい化学物質である合成樹脂が添加されています。塗りやすさと保存性のためでしょうね。
アレルギーをお持ちの方がせっかく体に良いと考えて自然素材を使ったのに、実は化学物質が含まれていた、なんて泣くに泣けませんよね。じゅらく壁に漆喰を塗った時に、練りタイプの漆喰やシーラー(アク止め剤)を使わなかったのも、同じ理由からです。
ちょっと脱線しますが、先ほど「建築資材も」と書いたのには意味があります。
実は農業界にも同じようなことがありました。ワタクシが記憶しているのは、1980年前後の、いわゆる「第二次有機農業ブーム」の時です。
当時はまだ法の整備がされておらず、どんな野菜でも勝手に「有機野菜」と名乗って、付加価値を付けて販売することができたのです。先輩農家から聞いた話では、農薬を使っていない風を演出するために、出荷前だけ虫を殺さずあえて虫食いの穴を作る、なーんて高度な技術もあったようです。果たしてそんなにうまく行くのかどうかは知りませんが(笑)
食べ物の場合は日々口にするものだから、その後ちゃんと法が整備されましたが(といっても、法整備までに20年近くかかったと記憶していますが)、建築資材はそこまでの緊急性がない、ということなのでしょうか。
でもワタクシたちは化学物質過敏症を始めとするさまざまなアレルギーは、衣食住すべてに関係があると考えています。ですので改装に使う資材はできるだけ自然素材にしよう、と考えたのです。
『くらしの宿Cocoro』で実際に使ったもの
『くらしの宿Cocoro』を作った時に特に重視したのは、床材、壁材、床に塗るオイル、壁に塗る漆喰やペイントなど、家の中で占める面積が大きいものです。そこから放出される物質は、家の中でかなりの量になります。そして気密性が高い現代の家ほど、当然その影響は大きくなります。まぁ『くらしの宿Cocoro』は古民家なので、気密性はそれほど高くないんですけどね。
で、実際にワタクシたちが使ってみて、本当に良かったものを今からご紹介するのですが、どうしても宣伝っぽくなっちゃいます。宣伝が苦手なかたはこの辺すっ飛ばしちゃってください。しっかりした天然素材でDIYをしたいとお考えのかたには、参考になると思います。
まず無垢の床に塗るオイルは何を使ったのか。
信頼のアウロです!
アウロの取り組みは本当に素晴らしくて、自然素材のオイルといえばもうこの1択しかない! くらいのレベルです。
これはNo.129という無垢材に塗るワックスなんですが、100%天然原料(鉱物含む)でできています。オレンジの爽やかな香りで作業をしてても全然臭くありません。それどころか超ゴキゲンになれます。
普段のお掃除にもアウロを使っています。アウロにも残念ながらクイックル◯イパーのような使い捨てシートもありますが、コチラの液体のほうが断然エコでしかも経済的です。これは汚れ落としとワックスがけが一度にできるので、重宝しています。
お客さまからのご希望があれば、一緒にお掃除をすることもあります。お掃除の様子はコチラからどうぞ!
ちなみに無垢材に初めてワックスを塗ると、こんな風になります。

下が無垢のままの状態、上の方にはオイルがぬってあります。オイルを塗ると木がしっとりするのと、あと木目がとてもキレイに出ます。無垢材はそのままだと柔らかくて衝撃に弱いので、オイルを塗って固める必要があります。初めて塗った時は感動したなぁ。床を貼ってくれた大工さんが後日「お〜、ええ色になった」と喜んでくれたので嬉しかったです。
先ほど練り漆喰に合成樹脂が含まれているという話をしましたが、よーく探すと、ちゃんとしたものも見つかります。『くらしの宿Cocoro』では基本的には本漆喰を練って塗りましたが、ちょっとだけ塗りたいとか、何回かに分けて塗るような時には、これを使いました。
本漆喰よりも柔らかいしよく伸びるので、漆喰塗り初心者さんには使いやすいと思います。
反対にコテ跡をしっかり出したい人は、本漆喰をオススメします。コレですね。全部で30袋くらい使いましたかね。最後の方はお店の人にすっかり屋号を覚えられてしまいました(笑)
中にはどうしても自然素材でできなかったものもあります。
タイルのボンド、目地材、水回りのコーキング材です。これはいくら探しても「これだ!」というものが見つかりませんでした。もし実際に試してみてコレは! というものをご存じの方がいらっしゃれば、ぜひ教えて下さい!
と、こんな感じで自分たちができる限りのことを考えて、右往左往しながら改装を進めてきました。
初めて化学物質過敏症のお客さまをお迎えした日
そんなことをアレコレ考えながら改装を終え、開業間もない2019年のある日、知人から一本の電話が。
「友だちが化学物質過敏症なんだけど、泊めてもらえるかな?」
おお、もうそんなお客さまが来ちゃいますかー。
今までコツコツとそのための準備をしてきたとは言え、お客さまの具合が悪くなられたらどうしようかと、ちょっとビビるワタクシたち。
詳しく話を聞いてみると、久しぶりに実家に里帰りをしたはいいけど、家の中の香りが強すぎて長時間はとてもいられない。かと言って安心して泊まれる場所もないし、どうしたらいいものかと悩んでいたそうです。
しかしまぁ、ここで受け入れをビビっていても始まらない。まずは実際に『くらしの宿Cocoro』に来ていただいて、実際の様子を見てから判断してもらうことになりました。当然お客さまからはいろんな質問が出ます。
「洗濯洗剤は何を使っていますか?」→木灰を煮出したもの(自家製)とムクロジの実(ソープナッツ)です。
「柔軟剤は?」→使ってません。
「芳香剤は?」→一切使っていません。
「シャンプーは?」→オーガニックの石けんです。
「ファブ◯ーズは?」→持ってませんし、使ったこともありません。
「お掃除はどうやってしますか?」→基本的にはほうきと雑巾がけです。
「食べ物は?」→うちで自然栽培した野菜とお米です。
「化学調味料とか使います?」→使いません。
「エアコンは?」→ございません。
「テレビは?」→ございません。
「Wi-Fiも?」→ございますが、ご要望によりオフにできます。
いろいろ話をした後のお客さまの感想は
「なんかここなら大丈夫そう」
いやー、少し安心しました。まずは様子見で1泊していただこうということになりました。
そして緊張の翌朝。
「家よりもよく眠れました!」
そうですか! それは本当によかったです。結局お客さまはそのまま3連泊されました。快適にお過ごいただけたようで、ホッとしました。今までやってきたことがあながち的外れでなかったことにも、安心しました。
そしてワタクシ気づいたんです
化学物質過敏症のかたって、古民家に住むのがいいんじゃないだろうか?
理由はいくつもあります。ざっと挙げてみても
- 建材の大半がナチュラル(化学物質や新建材が使われ始めるのは70年代くらいから)
- 気密性が低い(だから寒い、というデメリットもありますが…)
- 夏涼しく、冬暖かい(意外でしょうが本当なんです)
- 電気の配線が少ない=電磁波の発生源が少ない(昔はコンセントがたくさんあると固定資産税が高かったそうですね)
- かわいい♡
5は個人的な趣味であり100%主観なので放っておいてもらえばいいのですが、それ以外はけっこう本気で言ってます。化学物質過敏症の方が悩まれていることが、古民家に住むことで大きく解決に向かう! と、そこまで思うのはワタクシの思い込みかなぁ?
あと古民家は夏は涼しいけど、冬は寒いからイヤだ、なんて話をよく聞きますが実際にはそうでもありません。住んでみればよく分かると思うんですけど、古民家には超ポカポカスペース
縁側があるからです!
昔のじーちゃんばーちゃんは昼間は陽だまりの縁側で何かしら作業をしてましたよね。
ネコも昼間はいつも縁側でゴロゴロしています。冬でも太陽さえ出てくれれば、暖房は全くいりません(ただし縁側から別の部屋に移動するとチョー寒いですが…)。

現に今も、縁側でこの文章を書いています。ヌクヌクしてて幸せです。地元のちゃんとした大工さんが建てた古民家だと、ひさしの角度が絶妙で、夏は日光をさえぎって涼しく、冬は部屋まで日を通してくれます。
もう一つ古民家でよく聞くのは、足下から冷えるというものですが、これは床下に断熱材(天然素材のものとしてはモミガラがいいかもです)をいれることで、かなり改善できます。でもね、夏は暑くて冬が寒いのなんて当たり前ですよね。それをエネルギーを使って不自然に快適にすることにも問題があるんじゃないでしょうか。
最後です。みんなでくつろげるリビングは元々は畳だったのですが、床下に断熱材を貼り床はフローリング(無垢材)に替えました。畳も風情があっていいんですけど、ダニやほこりが溜まりやすいのが難点です。掃除も掃除機が必要だし。呼吸器系のアレルギーがある方は、フローリングを断然オススメします。
そんなどなたにも快適に過ごせる宿『くらしの宿Cocoro』に泊まりに来てくださーい。
お待ちしてまーす♪
[この記事は2019年11月14日に公開した『化学物質過敏症の人はどんな家に住んだらいいのかしら?』を、加筆修正し2023年1月に再度公開したものです]
キャンプ用の折りたたみの椅子を、南向きで北風が当たらないところに持ち出して、ひなたぼっこをしています。
これは、縁側だ。家を建てる時に、縁側の提案はなかった。残念です。
はじめまして。
いつも楽しく、ワクワクしながら拝見しております♪
憧れの縁側❤️
いつかはサザエさんのフネさんのように、着物を着て、縁側のある家で自給自足の、足るを知る生活。
夢は膨らみます(^ ^)
これからも、生活に根差した情報、楽しみにしております♪
久留米じいじさん
あはは、ポータブル縁側ですね! お日さまポカポカで気持ちよさそう。
tonjilさん
初めまして~。コメントありがとうございます。ぼくは縁側で波平さんといささか先生を思い浮かべてました。サザエさん、なかなかの影響力ですね(笑)
感想もありがとうございます。励みになりまーす☆