みなさん、こんにちは。岐阜県郡上市でオーガニックな農家民宿『くらしの宿Cocoro』を営むただっちです。
『くらしの宿Cocoro』は築70年ほどの古民家を改装しました。改装にあたっては大きな工事は大工さんに、小さなところはコツコツと自分たちでDIYしたのですが、ワタクシたちのDIYがいつから始まったのか。
当時の作業日誌を読み返しますと「2018年10月31日」とあります。今からすると、はるか昔のような気がしますね〜。『くらしの宿Cocoro』はここから始まったんだなぁ。では実際にどんなDIYをやったのか。今回は「じゅらく壁に漆喰を塗る」というテーマで、ワタクシたちの気付きや失敗をお伝えしつつ、当時を振り返ってみたいと思います。
いざ郡上へ。いよいよDIY開始だ!
大工さんが全ての仕事を終えて、家がワタクシたちに引き渡された直後の写真がコレです。
いや、どう見ても工事中だし。まるで引き渡された気がしねぇ…。
って、普通は思いますよね。でもここがスタート地点です。ドキドキもワクワクもあり、でも何をしたらいいのか分からなくて、写真を撮りながら、実は軽く路頭に迷っています…。
大工さん、気を利かせてくれてワタクシたちのDIYのために、床の養生をそのままにしていってくれてました。ありがとう、大工さん! 差し入れのお茶とかまでそのままなのも、現場感たっぷりで気分が上がるよね〜笑
カウンターの土台を見て、うぅ、早くカウンターを作りたい! という衝動を全力で抑えつつ、作業の手順を考えてまずは壁に漆喰を塗るところから始めます。
まずは壁に漆喰を塗るのだ
「漆喰を塗る」という作業は、DIYでとても人気がありますよね。それほど高い技術が必要ではないので、DIY初心者にはオススメです。漆喰を塗ると部屋の雰囲気が一変して、とても落ち着いた感じになります。住む人の健康のことを考えても、長期的に見たコスパを考えても、リフォームするならクロスより断然漆喰をオススメします!
その他にも漆喰のメリットとしては
- 湿度のコントロール
- 化学物質の吸着
- 防火
- 消音
などが期待できます。
マスキングをしたり、漆喰を練ったりという準備が初心者にはやや大変ですが、慣れてくると8畳間の壁なんて土日の2日間で余裕で塗れちゃいます。
漆喰の注意点いろいろ
まず最初に注意する点としては、どんな壁に塗るのか。
クロスが張ってあるのか、板張りか、石膏ボードか、土壁か。
壁によって本塗り前の作業である下塗りのやり方が変わってきます。
次にホームセンターでよく見る、すでに練ってあるタイプの漆喰を使う場合なんですが、敏感な方は事前にどんな添加物が使われているのかをよーく調べましょう。
箱には詳しく書かれていないので、そういう時はメーカーに直接質問するとたいてい教えてくれます。ワタクシは各メーカーに質問しまくって、安いものや塗りやすいものにはほとんど添加物が使われていることが分かりました。この辺、加工食品とよく似ていますね〜。
で、『くらしの宿Cocoro』の壁が何だったかというと、じゅらく壁でした。ここに本漆喰を塗ろうと考えたのです。練り漆喰だけではなく、この本漆喰にも添加物が入っている物があるので、何と言いますかなかなか奥深い世界です…。
ちなみにワタクシが厳正なる審査の結果選んだのは、添加物が一切入っていないこの本漆喰です!
自分で練るのはちょっとハードルが高いなぁ、というかたには同じメーカーさんのこちらをオススメします。価格的には練ってある方が高くなりますが、練る手間や道具の片付けなどを考慮すると、8畳までなら練り漆喰の方が使いやすい気がしますね〜。
じゅらく壁とは
ところでみなさん、じゅらく壁ってご存じですか?
1980年代に流行った壁に塗る資材なんですけど、壁土の中にキラキラしてる繊維のようなものが練り込まれています。このキラキラ繊維の正体はプラスチックです。正体を知った瞬間に「な、なぜにそんな不要なものを…?」という大きな疑問が生まれますが、当時はきっとナウくてトレンディでイケてたんでしょうね。
現在でもこのじゅらく壁はしぶとく生き残っていて、今のじゅらく壁はボンド入りでカチッと固まっているんですが、昔のものはボンドなし。それが塗られてから数十年経ち劣化した今、ちょっと手が触れただけボロボロと落ちてくるんですね…。プラスチック入りのよく分からない土がね…。
ワタクシは子どもの頃からこのボロボロ落ちてくる土が大嫌いでして、まずはこれにさっさと漆喰を塗って、初めから無かったことにしてしまおうと思った訳です。
じゅらく壁を塗る方法
ではどうやってじゅらく壁を塗るのか。まずはその手順をざっくりとお伝えします。
- マスキングをする
- じゅらく壁をはがす
- 砂漆喰を塗る(下塗り)
- 本漆喰を塗る(本塗り)
この4ステップです。
じゅらく壁をはがした時に、土壁があまりにやせている場合は、壁土を練ってすき間を埋める必要があります。先ほどの写真でも土壁と柱の間がボロボロになってすき間ができています。こういうところは最初に埋めておきましょう。
埋める資材としては土壁用の土がベストですが、なければ粘土質の土を練って使います。細かいことがあんまり気にならない方は、モルタルでも大丈夫です。
下塗りをする時の注意点(という名の寄り道)
ちょっとここで寄り道します。寄り道のわりにはけっこう重要なことだと思いますので、読み飛ばさずに一緒に道草を食ってください!
ネットで調べると、たぶんほとんどのサイトで「3.砂漆喰を塗る(下塗り)」のところに「シーラーを塗る」と書かれていると思います。土壁の上にじかに真っ白な漆喰を塗ると、土から出たアクが染みてくるんですね。なので「見た目なんぞ全く気にしないぜ」というツワモノさん以外は、本塗りをする前に何かでアク止めをする必要があるんです。
シーラーを使うのがもっとも一般的な方法なんですけど、このシーラーも当然ながら化学物質なんですよ。まれに天然素材のシーラーとかって宣伝してるものがあるんですが、よく調べてみるとこれにもアクリルが入ってたりします。ワタクシは果たしてこれが本当に最善なのだろうか、とイチイチ考えて立ち止まってしまうのです。だから作業が全然進まないんですけどね(笑)
『くらしの宿Cocoro』のコンセプト一つに「どんなかたにでも安心してお泊まりいただける宿」というものがあります。
だからお客さまが使用する部屋にはできるだけ化学物質は使いたくない! そもそも化学物質の吸着を期待して漆喰を塗ってるのに、その真下に化学物質を使ってたら本末転倒じゃね?
う〜む、じゃあ一体どうしたらいいんだろう…、ってんで考えまくり悩みまくっていた時に辿りついたのがこちらのブログです!
ブログ主さんに感謝です! このブログで、私たちは砂漆喰というものを初めて知ったのです。コレです!
砂漆喰とはあまり見慣れない資材ですが、簡単に言ってしまうと漆喰に砂を混ぜたものです。
これを土壁の上に塗ることで土からのアクを止め、なおかつ本漆喰の乗りを良くする。しかもオール天然素材! というまるで夢のような、でも伝統的な資材です。
使ったことはないけど、これなら希望が持てるぞ! やってみよう! という訳で寄り道は終了。漆喰塗りに向けてようやく始動できたのです!
手順1 マスキングをする
これは塗装作業全般における基本のキです!
マスキングテープ、布マスカー、ブルーシート、新聞紙などを使って、汚したくない場所をしっかりと覆っていきます。メーカーによって、使い心地が全然違います。マスキングテープや布マスカーには幅や長さなど、いろんな規格がありますのでいろいろ使ってみて自分が使いやすいものを探してみて下さい。
慣れないうちはマスキングテープや布マスカーがくっついたりして超大変です。でもだんだんと上手になるんだよなぁ。さすがにプロのようにはできないけど、壁の端から端まで真っ直ぐにテープを貼るなんて、やってれば誰でもそのうちできるようになってきます。
手順2 じゅらく壁をはがす
ハイ、みなさん注目! 大失敗はここでやってきましたよ〜(笑)
失敗って実は大事なんだよね、という話はコチラの記事から。
ネットで調べた情報によると
・じゅらく壁に水をしっかり含ませてからスクレーパーなどではがす
・1畳につきヤカン1〜2杯分の水が必要
とあったので、それを鵜呑みにしてスプレーで水をどっさりかけました。
するとネットの情報通り、じゅらく壁はちゃんとはがれました!
が、しかし! その下の土壁の土までドロドロと溶け出してきたのです…。必要以上にたくさんの水をかけてしまったんですね。溶けた土の掃除にとっても手間取りました。
ひと言でじゅらく壁といっても、きっと職人さんによって、また地域によっていろんな塗り方があるんでしょうね。うちのじゅらく壁はかなり薄く塗ってありました(1mmくらいかな)。ネットの人のところは、たぶん厚く塗ってあったんでしょう。
なので最初から水をドバドバかけるのではなく、少しかけてじゅらく壁がふやけてきたらスクレーパーで削ってみて、ちゃんとじゅらく壁がはがれるならそれでOKです。
はがす量もしっかり土壁が見えるまでやるとやり過ぎです。土壁とじゅらく壁の境目が出てきたな、くらいでOK!
で、はがれたじゅらく壁はその都度こまめにお掃除します。こういう時は100均に売っているような小さなほうきとちりとりが大活躍です。
このじゅらく壁のカスが残っていると、漆喰と一緒に塗り込んでしまい壁がとても汚くなります。そして水をかけすぎていると、水を吸ったじゅらく壁の掃除が大変です。いろんなところに貼りつく。しかも濡れてるからほうきで掃くと伸びる。なので水はくれぐれも適量で!
この辺りはあまりの大惨事で写真を撮る余裕なし(笑) ま、そこはお察しくだされ。
手順3 砂漆喰を塗る(下塗り)
さて、準備が終わりようやく漆喰ステージに入ります。まずは下地となる砂漆喰を塗ります。
この砂漆喰には読んで字のごとし、砂が入っています。ですので本漆喰のようにスーッとは伸びず、ザラザラでブツブツしています。まずはそれを土壁に塗って行きます。
下塗りは薄く均一に、がポイントです。砂漆喰はザラザラしているのでちょっと大変ですが、ここをしっかりやると本塗りが美しく仕上がります。本塗りよりも丁寧に塗る、くらいの気持ちでしっかりとやった方がいいと思います。
手順4 本漆喰を塗る(本塗り)
で、最後はその上にすかさず本塗り。本漆喰を塗っていきます。
砂漆喰から本漆喰を塗るまではできるだけ素早く! ここをゆっくりやってると、砂漆喰が乾いて(正確には土壁が砂漆喰の水分を吸ってしまって)、ポロポロはがれてきます。本漆喰も乗りません。専門用語で「水引きが早い」と言うそうです。なのでここは一気にスピード勝負!
二人で作業できるなら、一人が砂漆喰、それを追いかけるように二人目が本漆喰、てな感じでやってもいいです。それくらいスピード命ってことで、そこんとこヨロシクです。
本塗りはワイルドにコテ跡をつけるもよし。ツルツルに仕上げるもよし。塗る人の個性も出るし、漆喰塗りで一番盛り上がるところですね〜♪
そして本塗りで一番心がけて欲しいポイントは、壁の中央ではありません。周囲の縁をしっかり出すことです。縁がフラフラしてると、その壁は絶対にキレイに見えません。
でも縁がしっかり出てると、ほらこの通り。なぜかプロっぽく見える、気がする。
んー、まあまあやな。
ここをピシッと出す秘訣は、マスキングテープを貼る位置です。文章にするのは難しいので、トライ&エラーしながら少しずつコツを掴んでいってください。
とまあ、こんな感じで『くらしの宿Cocoro』のDIYを進めたのです。二階まで含めて、今では塗った壁の面積はほぼ1軒分。使った漆喰はおよそ600キロ。頑張ったな、ワタクシたち。
そんな漆喰だらけの『くらしの宿Cocoro』にぜひ遊びに来てくださーい。最初の頃に塗ったちょっとぎこちないものから、職人かくらいのレベルまで(それは言い過ぎやろ)、いろんなワタクシたちの葛藤の跡が見れますよ〜!
たくさんのかたにお目にかかれるのを楽しみにしています♪
[この記事は2019年10月24日に公開した『【古民家を素人がDIY】 漆喰をじゅらく壁に塗る方法』を、加筆修正し2023年3月に再度公開したものです]
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