※この記事は2019年10月に公開したものに加筆修正の上、2022年4月に再度公開したものです。
みなさん、こんにちは。岐阜県郡上市でオーガニックな農家民宿『くらしの宿Cocoro』を営むただっちです。昨日は久しぶりに晴れました。夜、外へ出てみたら、星がとてもキレイに見えました。田舎の夜は暗くていいな〜。いつの間にかオリオンが山の上の方まできていましたよ。冬が近いですね〜。
実はですね『くらしの宿Cocoro』は
「たがやす・たべる・くらす」
を満喫できるオーガニックな農家民宿とうたっています。今回はその中の「たがやす」について、書いてみたいと思います。
目次ですよ
「たがやす」って?
「たがやす」 つまり農ですね。
最近は家庭菜園や貸し農園などで、野菜を育てている方をよく目にします。自分たちで食べ物を育てることは、健康面や経済的な面、子どもたちへの影響、そして環境への影響など、いろんな面から見て、とってもオススメです! ワタクシたちはプロの農家なので、販売はもちろんですが、自分たちで育てたお米や野菜を普段から食べています。
でも農家になる前は、ずっとスーパーで野菜を買っていました。買わなきゃ手に入らないから当たり前ですよね。でも農家になってみて、その当たり前が少しずつ揺らいで、段々と意識が変わってきました。今では野菜を買うことは、ほとんど(というか全く)ありません。
農家になって気づいたこと
一番最初に気づいたのは野菜の「味」でした。
自分たちが育てた野菜に比べると、スーパーの野菜がなぜかおいしくないのです。最初は
「コレはあれだな、一種の親バカだな。オレたち恥ずかしーヤツらだな」
とか夫婦で話しながら食べていました(笑)
そのうち野菜を買ってくれているお客さんからも「Cocoroさんのお野菜を食べるとスーパーの野菜が食べられなくなるね」なんて声を、チラホラと聞くようになりました。これまた最初は
「いやいや、うちの野菜がそんなに特別なハズがない。コレは社交辞令に違いないぞ」
と半ば疑いながら聞いていたのですが、他のお客さんも同じようなことをおっしゃってくれるのです。
って思い出しながら書いてて気づいたけど、自己評価低すぎやろっ(笑) もうちょっとお客さんの声に耳を傾けろよ、と当時のワタクシたちにツッコミを入れたくなります。でもね、農業始めた頃って、ホントに自信がなかったんだよな〜。
本題に戻ります。
この味の差は一体なぜ生まれるんだろう? 鮮度? 栽培方法? 野菜の品種の違い?
残念ながら私たちの技術でないことは確かです。だって当時、そんな腕なかったもん。今ならタネの違い、堆肥のこと、土の中の微生物のこと、考えられることはいくつもあるんですけど、当時はそんな風に判断できる知識も技術もなかったのです。
ま、当時考えた理由としては
「知っている人が、心を込めてちゃんと育てた野菜だから」
ではなかろうか、という結論に至りました。
顔の見える関係とか、育てる人と食べる人との関係性、とでも言いましょうか。あ、ついでに言うと、ワタクシ「消費者」って言葉がキライです。「先進国」と同じくらいキライです。って、ここではどうでもいい話でしたね…。
そりゃーどこかの見知らぬ人より、近所の顔見知りの人だよね。化成肥料でササッと育った野菜より、有機栽培(当時、うちではまだ有機肥料を使っていたのです)でじっくり育てたほうが、いいような気がするよね。そうやってうちを応援してくれるお客さんがたくさんいるのは、ホントありがたいよなー、なんて思いながら農業をやっていました。
お客さんからのリクエストが届く
そのうち仲良くなったお客さんから「ルッコラが食べたい」「ビーツはやってない?」「雑穀をやって欲しい!」「もっとお米が食べたい」などなど、いろんなリクエストが届くようになりました。
最初の頃は畑の規模も小さくて、お客さんも少なかったので、「よし、リクエストにお応えしましょう!」 とばかりに畑を増やし、栽培品目を増やし、時には機械を導入し、いろいろと頑張ってみました。が、いかんせん私たちはかけ出しの弱小農家。技術もなければ体力もない。勉強もしなくちゃいけないし、営業も大事。今思えば、そんな時期に手を広げてはいけなかったのです…。
その結果、2人で朝から晩まで激しく働いても仕事が全然回っていかない。当然、畑も家もクッチャクチャ。何となく生活まですさんできて、ちょっとしたことで口論になり、時には皿が飛び交い……。
なーんてことは全くありませんでしたが、「なんか忙しすぎて、いろんなことがうまく回ってないよな〜」とは感じていました。
そんな状態が2年ほど続きましたか。当時は、タネをF1種から固定種に変えたり、有機栽培から徐々に堆肥を使った栽培に切り替えたり、と大きな転換を進めていた頃です。野菜の味も安定してきて、野菜もお米もどうにかこうにか育つようになっていました。その結果、お客さんも徐々に増えてきました。
でも受注に対して生産が全然追いつかない。出荷できる量が足りなくて、せっかくいただいたご注文をお断りしたことも何度もありました。ワタクシたちの栽培方法って、収量は少ないし、生長に時間がかかるし、大量生産には向かない農法なんだと、その時になってようやく自覚することができたのです。
現実にうちの野菜を必要としている方がたくさんいる。でもこれ以上畑を広げたら体力が保たないし、人を雇ったり機械を買うお金もないし、こりゃ一体どうしたらいいんだろうかねぇ、とジレンマにさいなまれる日が続きました。
「小さな農家」の誕生
とかずっと考えていたら、人間の発想ってスゴいもんです。突然ピカーンとひらめいちゃったんですね〜。
「ワタクシたちができないなら、食べたい人が自分で野菜を育てたらいいじゃないか!!!」
その小さなひらめきを突き詰めていった結果、「小さな農家」というビジョンが明確に浮かび上がってきたのです。
みんなが「小さな農家」になって、自分たちが食べる分のお米や、食べたい野菜を育てる。そうすれば食べ物を買うお金が減らせるので、今ほどお金を稼ぐ必要がなくなる。
ワタクシたちは野菜そのものを売るのではなく、栽培技術を伝える。それなら自分たちの畑を広げる必要はないし、農業があまり忙しくない冬にも取り組める。
そうこうしているうちに耕作放棄地が減る。自給率も(少しずつだけど)確実に上がる。農薬や除草剤の使用料も確実に減る。自分が食べる野菜にはそういう毒って、あんまり使いたくないでしょ。
えー、いいことばっかりじゃーん!
お客さんが自分で野菜を育てることは、農家にとっては単純に収入が減ることを意味します。でも私たちはそれでいいよね〜、と思っちゃったんですね。どっちにしても自分たちでこれ以上の増産はできないし。私たちが持っている技術を伝えることで、みんなが幸せで楽しい人生を送ってくれたら、それはとてもハッピーだよな〜、と。
ま、技術を教えることで収入が得られるだろうという下心、…もといビジネス的な観点があったことは、決して否定しませんけどね。
ちなみにこの「小さな農家」は、最近国連でも支持されている、世界的な流れなんですよ。先進国と呼ばれる国や日本は棄権したり拒否して抵抗したけど、この流れは止めちゃいけない。農は一部の大企業の利権ではなく、私たちの暮らしの基盤そのものだからです。
そこで「小さな農家」を増やすために始めたのが、田んぼのワークショップと自然栽培・学びの畑でした。詳細はコチラからご覧ください。田んぼのワークショップは今年(2022年)でなんと9回目ですよ。いや〜、長く続いているなぁ。 ※今年のお申し込みはすでに打ち切りました。
「小さな農家」ってこんな感じ
ワタクシたちがイメージする「小さな農家」を具体的かつシンプルにまとめるとこんな感じです。
- 田んぼ5畝くらい(約500平方メートル)
- 畑2〜3畝くらい(半分は野菜、残りの半分は麦、大豆など穀物)
- 販売目的ではなく、自給のための農
- 機械はできるだけ使わずに手作業で
- 農薬、除草剤、化成肥料は使いません
- 家族みんなで作業します
- お父さんは平日はサラリーマンで週末農家
- お母さんは平日何日かと週末農家
- 子どもは毎日畑のチェックと収穫♪
どうです?
なんとなく自分たちの暮らしの中でもできるような気がしませんか? これくらいの広さの田んぼや畑を見つけることは、都市部ではちょっと難しいと思いますが、田舎なら本気で探せば必ず見つかりますよ。できるだけ家の近くがいいですね。
農業一本でやっていた頃は「技術を教える」という点の活動でしたが、『くらしの宿Cocoro』を初めてからは、農が持つ豊かな魅力を「体験してもらう」「楽しんでもらう」そして「暮らしに落とし込んでもらう」という風に、立体的な活動になってきたように思います。もちろんしっかりと自然栽培を学びたいかたに向けた特別講座も開きますよ!
人の暮らしの基盤である「たがやす=農」
それを自分たちの手に取り戻した時、私たちの暮らしってどんな風に変わっていくんだろう。そんなワクワクを少しでもたくさんの人に感じてもらえると楽しいな〜、と思っています。
ぜひ『くらしの宿Cocoro』に遊びに来て下さ〜い。農トークしましょう。ご予約は当ウェブサイトの「ご予約」ボタンからお願いします!
みなさんの訪れを心よりお待ちしてまーす♪
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