小学生から痛恨の一撃をくらったお話し

執筆者 | 2023-09-16 | 小さな農家, 生き方

みなさん、こんにちは。岐阜県郡上市でオーガニックな農家民宿『くらしの宿Cocoro』を営むただっちです。今年はなかなか涼しくなりませんね。世界に目を向けると大地震やら大雨やら。各地で大きな被害が続いています。う〜ん、ホントに色々と心配です。みなさんがお住まいの地域でも大きな被害が出ないことを祈っています。

災害と言えば、郡上に引っ越してきて間もない2019年のことです。梅雨に降った豪雨で、ワタクシたちは人生初の避難を経験しました。それまでは避難なんて避難袋を持ってさっさと逃げればいいじゃん、くらいに考えていたのですが、実際に経験してみると全然違いましたね。

そもそもさっさと逃げられない。

あれもこれも、いろんなことが気になって、なかなか避難できないのです。ワタクシたちは特に宿とネコのことが心配でした。

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ま、ネコたちには余計なお世話だったかもしれませんけどね…。

でもワタクシたちのようにモタモタしていると、気づいたときには台風のピークで時すでに遅し! みたいなことになりかねません。いろいろ後ろ髪を引かれることがあっても、あまり深く考えず、まずは決断して逃げるという行動を取ることが重要なんだな、と気づきました。

さて今回はワタクシが農家の修行をしていた若かりし頃に、小学生からくらった痛恨の一撃についてのお話しです。

あれは忘れもしません。ええっといつのことだったかなぁ…(すっかり忘れとるやないかい)。

ああ、そうでした。2011年の9月の頃でした。年を取ると物忘れがひどくなって困ります。

当時ワタクシはプロの農家を目指して、とある有機農家さんの下で研修をしていました。その農場が小学生の農体験を受け入れていたのですね。その日はピーマンの収穫体験でした。

収穫体験が無事に終わって、小学生との雑談の時間になった時、事件は起こりました。1人の小学生がこんな質問をしたのです。

「農家って食べていけないんでしょ?」

おおっと、いきなり痛恨の一撃をくらっちゃいましたね。

そのひと言を聞いた当時のワタクシの心境はとっても複雑でした。

自分の大事なものを否定されたような怒り。

子どもたちの未来への悲観。

子どもたちを育てている親御さんや教育者への失望。

農業界への不安、などなど。

ちなみに基本的に超ポジティブなワタクシはその場で

「食えるよ! だって野菜育ててんじゃん」

とデカい声で即答しましたよ。

それを聞いた子どもが「あ、ホントだ」みたいに素直に納得していたのが救いと言えば救いでしたが…。

ちょっと想像してみると「農家が食えない」なんて、子どもが自分で発想するわけはないですよね。たぶんその子の親が言っていたことを、そのまま質問したんだと思うんです。そして親御さんにしても、特に農業に関心があるわけでもなく、マスメディアで流されるステレオタイプな農家のイメージを口にしただけだと思うんですよね。

でも事実はどうであれ「世間でそう思われている」という点には変わりありません。で、当時(あ、今もか)青臭い若造(今は若造ではないな)だったワタクシは、そんなしみったれた固定観念なんてオレが引っくり返してやるぜ、と心に誓ったものです。

とは言え、ガンガン働きガッツリ稼いでイケてる農家! どーだ、スゲーだろ! みたいなストロングスタイルを目指したわけではありません。

ワタクシが目指したのは「農って楽しいよ〜」という方向と、「みんなで農をやろうよ〜」というユルい提案でした。親である大人にまずは農の魅力を感じてもらうこと、そして実際に暮らしの中に農を取り入れてもらうことが、子どもたちへの一番の教育だと思ったのです。

そこでワークショップやお話し会を企画し、貸し農園や貸し田んぼを整備して、大人が子どもと一緒に農に触れる機会を提供してきました。

これはワタクシが人前でお話をさせてもらう時によく言うんですが、まず大人が変わらないと世界は(未来は)ぜったいに良くなりません。子どもたちにその全責任を押しつけて、自分は今まで通りの生活を、なーんてのはもう止めましょう。

大人が本気で楽しむことができれば、その楽しさはきっと子どもに伝わります。そしてそれが子どもたちの未来を作っていく。

なので時々「子どもに農を体験させたくてワークショップに参加しました」という親御さんがいらっしゃいますが、親が本気で農に関わってなければ、子どもは楽しんでくれません。なのでまずはあなたが楽しんでください、と伝えています。

それが「小さな農家を増やす」という活動であり、現在の『くらしの宿Cocoro』に続いています。

幸いこの郡上には、今でも生活の中に農があるかたが多くみえるんです。昔ながらの生活、と言ってしまえばその通りなんですが、生活の中のあちこちに智恵が残っていてとても素晴らしいなぁと感じています。

そして都市部からは農のあるくらしを体験したいかたが『くらしの宿Cocoro』へ来てくださいます。『くらしの宿Cocoro』で体験してもらう暮らしは昔ながらの生活というよりは、これからの世代が目指すような、懐かしいけど不便すぎない、ちょっと未来の暮らしがイメージですけどね。

そんなかたたちに農の魅力と暮らしの楽しさを伝え続けていきたいなぁ、なんて思う日々です。

収穫の秋です。これからは稲刈りや冬野菜の準備、まだまだ足りない薪集めや薪割りなど、やることいっぱい、でも手は4本(2人だからね)という状況です。

ぜひ『くらしの宿Cocoro』に遊びに来て、「小さな農家」への一歩を踏み出してみてください。

お待ちしてまーす♪

※この記事は2020年9月に公開したものを、加筆修正の上2023年9月に再度公開したものです。

3 コメント

  1. ss-zakkadan

    まず大人が変わること。
    大切だなーって思った。

    返信する
  2. kurashiCocoro

    にゃん太郎 (id:ss-zakkadan)さま
    コメントありがとうございます! そうなんですよ~。子どもは希望だ、とか言う前に大人が変わらないと、子どもも希望を持てないと思うんですよ。ちゅーわけで頑張りましょー(^_-)-☆

    返信する
  3. 岡本幸江

    ご縁があり、現在兵庫県神戸市に住んでいる岡本と申します。
    突然すみません💦💦
    ワタシが住んでる里山は、150年続く小学校も全校生徒30名、暮らしているのはほとんどが高齢者です。
    (ワタシも高齢者ですが・・・・)

    耕作放棄地を田畑に戻そうと動いていて、どうしたらいいのか町で育ったワタシには
    全然分からず、ネット検索していたらCocoroさんのブログを拝見して・・・

    感動しました!
    ワタシも「小さな農家」が日本を 地球を救うと思っていて
    この思いを伝えてたいと思っていました。

    本当にすごい!!!

    突然すみません。
    また拝見させて頂きます。

    返信する

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