耕作放棄された田んぼを再生してみるー後編《機械編》

みなさん、こんにちは。岐阜県郡上市でオーガニックな農家民宿『くらしの宿Cocoro』を営むただっちです。

耕作放棄された田んぼを再生させるマイプロジェクト。前回は人力編として田んぼの中の石をどけるところまで進みました。

ここからいよいよ機械の登場です! といってもうちにある機械はトラクターだけなので、ブルドーザーやショベルカーなんて便利なものはいつまで待っても出てきません。

後半はこんな手順で進めます。

手順その④


耕す(6月3日)

ここでようやく耕します。トラクターの登場です! ヤンマー製、22馬力の頼れる相棒です。

トラクターでさっそうと耕してみたところ、20メートルもいかないうちに突然エンストしてしまいました。不思議に思ってロータリー(後ろについている耕すための部品です)を覗いてみたら、あんれまぁ! 

葛の根っこがビッシリと!

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なるほどー。大きな根っこは手で取ったけど、細かい根がまだ土の中にいっぱい残ってるんですね。このままトラクターにムリをさせると、ロータリーが壊れてしまい、ヤンマーさんから10万円の請求書が届きます(経験あり…)。

時間はかかりますが、少し耕してはエンジンを止めて根っこを取る、という作業を繰り返しながら耕します。時間も手間もかかるけど仕方ありません。

で、全体を一度耕した田んぼがコチラ。どーですか、みなさん。さすがにもうそろそろ田んぼに見えてきたでしょ。

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そしてトラクターで耕してみると、まだ取り切れていない石がいっぱいあることが分かりました。写真にもいくつか写ってますね。これをまた拾っては田んぼの外に出して、という作業を繰り返します。

手順その⑤


畦を作る(6月5〜8日)

畑として使うならもうほぼ充分なレベルまできましたが、田んぼにはもうひとつ重要なものが必要です。それは

畦(あぜ)

でございます。

田んぼに水を溜めるためには周囲に畦を作って、田んぼと畦にある程度の高低差を設けないとダメなんですね。ということで畦を作ります。まずは畦を作りたい場所に、クワやツルハシで溝を掘ります。掘った土は畦になる場所(田んぼの周囲)に積んでいくと、畦が強くなります。

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これで畦と田んぼに高さができれば問題ないのですが、今回はそれほど高低差ができませんでした。なので市販の「畦板」を入れて、高さをかせぐことにします。

こういうものです。サイズが色々あるので、田んぼの深さに応じて選びます。今回はこのサイズにしました。

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畦板波 長さ120cm×厚さ3.5mm×幅40cm
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基準となる高さで水平に水糸を張って、それに合わせて畦板を並べていきます。これで田んぼと畦に15〜20センチくらいの高低差ができました。水を溜めるには充分な高さです。

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畦板は田んぼの周囲に全部入れる必要はありません。水は基本的には低い方から抜けるので、田んぼのしもに当たる1辺(たいてい水尻と呼ばれる排水口があります)に入れれば、たいていの場合大丈夫です。張り終わってみれば、こんな感じになりました。

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写真では分かりづらいですが、30メートル以上あります。う〜ん、なかなかのできばえだぜ。って誰も言ってくれないので自分で言ってます。

手順その⑥


田んぼの均平を取る(6月12日)

畦ができたので、これでようやく田んぼに水が溜められるようになりました。ここから先はちょっと経験がモノを言う微調整が続きます。

まずは田んぼの均平(きんぺい)を取ります。 難しい言い方ですが、要は田んぼを平らにするってことですね。これができていないと、水を張ったときに深いところと浅いところができて、稲の成長がバラついたり、草が生えたりするのです。

ワタクシの場合、トラクターを使うこともありますが、ほぼ手作業です。土の多いところからスコップで土を取って、少ないところへ一輪車で運びます。

トラクターを持っている人にはこんな方法もあります。

PTOをオフにしておき、ロータリーが一番深くまで下がるように設定します。土が多い場所でロータリーを下げたら、一番遅い車速でじんわりと土を引っ張っていきます。もしロータリーに逆転がついていたら一度グッと土にめり込ませてから引っ張ると(引っ張るときはPTOはオフ)、より効果的です。

手作業でも機械を使ってもやることは同じで、土を高いところから低いところへ移動させます。この時点である程度土のレベルを整えます。

この「均平が取れているか」が、実際に稲作を始めると大きな意味を持ってくるのですが、最初は均平が取れているかなんて、まず分かりません。でも何年かやっていくうちに、目が養われていくと思いますので、恐れることなく挑戦してください!

手順その⑦


水を張る(6月12日)

ここでようやく水を引き入れます。

水が入ることで、田んぼの中のデコボコがよく分かります。そして田んぼに水を初めて入れるときの感動ったら、それはもう言葉にできないくらいですよ。その感動の瞬間がコチラ!

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ひゃっほーい! 水だ水だ! 

あれ? 浮かれているのはひょっとしてワタクシだけですか。ああ、そうですか。

代かきをする(6月15日)

水が溜まればあとは一気に仕上げます。トラクターで代かき(しろかき)です。代かきというのは田んぼの土と水をこねて、泥状にする作業です。

ここでまた高低差がハッキリと見えてくるので、トラクターで土を引いて均平を取ります。この写真だと右下が高いので(高くて水が登ってこれない場所がありますね)、右下から中央へと土を引っ張ります。

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一度水を入れてしまうと、手作業で土を移動させることはかなり大変です。トラクターを持っていないかたは、手順その⑥をしっかりやって、ここは何もしなくていいくらいにしておきましょう。

そんなこんなで均平が取れ、代かきがほぼ終わったのがコチラ。どうです? もう田んぼじゃないとは言わせませんよ。ここまで約1ヶ月。ほぼ予定していたペースで進めることができました。

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空は青いし、田んぼはどこまでもなめらかだし、ホント気持ちい〜い!

そしてついに田植えの日がやってきた!(6月21日)


田んぼの再生を始めてちょうど1ヶ月。ついに田植えを迎えました! ワタクシの短い田んぼライフを振り返ってみても、1枚の田んぼに短期間でこれほどの熱意を注いだことはありません。

しかも田植え当日は「夏至・新月・部分日食」とイベント満載。テンションがますます上がります♪

前日からアレコレと田植えの準備をし、それが終わると今度は畑へGo! 夏至の直前なので日が長く、朝から晩までずーっと作業ができます。

今にして思えば、コレが間違いのもとでしたよ…。

晩ごはんを食べていると、なんだかちょっぴり(というか、かなり)気分が悪いのです。

頭が痛くて、全身が熱っぽくてダルい感じがします。体を動かそうにも筋肉がうまく反応してくれない感じ。うぅっこの感じ、今までにも何度も経験したことがある…。そうこれはまぎれもなく

熱中症やね…

アホすぎる…。田植え前日によもやの熱中症。

そして案の定、翌日の田植えに参加できず…。

ま、ワタクシらしいっちゃぁワタクシらしいんですけどね。近年まれに見る大失態でした。

じゃあ田植えはどうなったんだ? というと、Cocoro妻や今年の田んぼのワークショップに参加しているメンバー、『くらしの宿Cocoro』にご宿泊のお客さまがたにお手伝いいただき、予定通り終わったのでした! お手伝いをしてくれたみなさん、本当にありがとー!

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しかしねぇ、いてもいなくても作業に影響がないワタクシの存在って一体…。ああ、無情。

現在の田んぼの様子(2024年6月)


さて、ここまでは2020年に行った耕作放棄田んぼの復旧作業をお伝えしてきました。

そんな田んぼが現在(2024年)どうなっているかと言いますと

こうなってます! まー、かわいらしい田んぼだこと。

実はその後、すぐ隣で田んぼをやっていたおじいさんから「うちの田んぼもやってくれ」と頼まれまして、面積がほぼ2倍になりました。といってもたぶん8畝(800平方メートル)くらいの、小さな田んぼです。

この小さな田んぼも2020年からずっと無肥料・無農薬で田んぼを続けて、今年で早くも5年目に入りました。毎年しっかりとお米が取れていますよ。

そんな美しい田んぼを見に『くらしの宿Cocoro』に遊びに来てくださーい。そして本格的に田んぼを学びたい人に向けた『小さな田んぼのワークショップ』もあります! 家族向け、自給向けの「小さな田んぼ」の技術をほぼ1年かけて余すところなくお伝えいたします。

これからの季節は田んぼも畑も、体験できることいっぱいです! 夏野菜もドッサリ取れ始めました。自然栽培のお野菜とかまどご飯、どちらもとっても美味しいですよ〜。

熱中症にはくれぐれも気をつけて、楽しく作業しましょうね〜(自虐か) 

お待ちしてます♪

[この記事は2020年6月25日に公開した記事を再編集しています。]

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