小さな田んぼの収穫祭《後編》-そしてHさんに変化が…


※この記事は2019年11月に公開したものを、文章の加筆修正を行い、2023年2月に再度公開したリライト記事になります。

みなさん、こんにちは。岐阜県郡上市でオーガニックな農家民宿『くらしの宿Cocoro』を営むただっちです。

昨日の郡上の最低気温はマイナス1.2℃。うわ〜、早くも氷点下、きちゃいましたよ〜。庭の水たまりが2センチくらい凍ってました…。明日からは台風の影響でしばらく暖かい日が続くみたいですが、今年の冬の寒さはどうなのかなぁ。

さて《前編》からの続きです。

不機嫌そうなHさん

そうです。ワタクシが気になるのは、参加者さんの中でひときわ異彩を放つHさんのことです。

他の参加者さんがみんなで和気あいあいと作業をする中、赤ちゃんを抱っこして、ちょっと離れた場所から冷めた目でワタクシたちを見ています。3月のワークショップは初日でほぼ初顔合わせということもあり、「何かプライベートで不機嫌になることがあったんだろうなぁな」と思ったくらいで、特にお話しなどはしませんでした。

ただ、やっぱり講師としては参加者さん1人1人の様子が気になるんですよね。少しでも楽しく、興味を持って学んでもらえるよう、いろいろと考えますから。彼のこの様子は一体何が理由なんだろうなぁとか考え続けていて、ふと思い出したんですよね。

ああ、今までにもそんな目で見られたことあったわ…。

思わず遠い目をしちゃうけど…。

マルシェなどで野菜を対面販売していると、たま〜にですけど突然こんなことをおっしゃるかたがいるんですよ。経験上、年輩の男性が多いかな。そして最初からなぜかちょっとキレ気味です。

「無農薬の野菜? ハァ? そんなもんできるハズがないやろ!」

イヤイヤ、それを育てて販売してワタクシたちは生活をしているので、できないってことはないですよ〜、とか返答すると

「どーせたいしたことないわ」

とか捨て台詞を残して去っていきます…。当然ですが、野菜を買ってはくれません(これで買ってくれてたらそれはそれで怖いけど)。

取り残されたワタクシたち、ポツーン。

説明や歩み寄りの余地は全くありません。そして彼らが最初からキレ気味なのも、そんな風に吐き捨てて去っていく理由も不明です。

でもこれって、有機農業あるあるですよね、同業者のみなさん? アレ? まさかワタクシだけ、…か?

その時のHさんの目が、そんな人たちの目とまさにとそっくりだったんです!

異質なものに対する恐怖感なのか、自分が理解できない物はこの世界から排除したいという感覚なのか、理由はないけどとにかく不審なのか。ま、そんなところがない交ぜになった感情なのかなぁと勝手に分析しているんですが、有機農業なんてマイナーなことをやってると、時々こんな事件(?)に遭遇します。

見知らぬ人からそんな態度で接されるとそれなりにはヘコみますが、どう転んでも生産的ではないのであまり深くは考えないようにしていますけどね。

うん、Hさんが不機嫌な理由はたぶんコレだ。と一応は納得して、次のワークショップを迎えました。

Hさんの態度に突然の変化が

その次にHさんに会ったのは、少し間が空いて6月の田植えの時でした。Hさんは4月と5月のワークショップには、仕事の都合で参加できなかったのです。

ところがです。久しぶりに会ったHさんはうって変わって明るく、前回とはテンションが全く違うじゃないですか。集合場所にもまさかの一番乗りです。

「おはよーございます。準備、なにか手伝いますよ!」

とびっきりの笑顔でそんなことを聞いてくれます。足取りも軽く、跳ねるように作業をしていて、全身から嬉しいオーラが全開です! でもその時も「お〜、今日はゴキゲンなんだなぁ」くらいにしか思っていませんでした。

その後Hさんとはプライベートでもたびたび会う機会があり、いつの間にか友人になっていました。友だち付き合いをしていても、いつも明るくてめちゃくちゃ好人物。でもそうなると余計に3月のあのチョー不機嫌なHさんが気になります。

あの時、なぜ彼はダークサイドに落ちていたのか…?

というわけでHさんに理由を聞いてみました

仲良くなったし、まさか今さらまた不機嫌になることもないだろうと思い、痛いところを突っ込んで聞いてみました(笑)

「どうしてあの時、あんなにチョー不機嫌だったの?」

Hさんの答えは、ワタクシの想像のはるか上を越えてゆきました。

「田んぼ始めたらサーフィンに行けなくなると思ったんですよ」

は? サーフィン? 

話をよくよく聞いてみると、最初に田んぼをやろうと決意したのは彼の奥さまだったんですね。で、奥さまに押し切られる形でワークショップに参加はしたものの、やっぱりオレは趣味のサーフィンに行きたい。でも行けない。オレ不満。オレチョー不機嫌…。

って、お前は遊びに連れて行ってもらえずにスネてる子どもかっつーの(笑)

自分のゴキゲンくらい自己管理しなさ〜い、と言ったかどうかは覚えてないんですが、あまりのバカバカしい理由に大笑いさせていただきました。

ついでにもう一つHさんに聞いてみました

でも疑問は残ります。相変わらずサーフィンに行けない状況は変わっていないのに、どうして田植えの時はゴキゲンだったのか。

「じゃあなんで田植えの時はゴキゲンだったの?」

「5月に種モミをまいたじゃないっすか。それが発芽したのを見て、うわ〜かわいい〜♡って思ったんすよ」

稲がけなげに発芽する様子が、キミの凍り付いた心を溶かしたんだね!

コイツにそんな力があったとは…

そして田植え以降も、まるで子どもの成長を見守る親父のごとく、稲の生長を楽しみにしていたのでずっとゴキゲンだったそうです。

アカン、面白すぎる。

何という単純 いやいや純粋な人なんだ。

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ピンぼけだけどHさんのゴキゲンは今も続いているハズ!

でもそんな風に人をガラッと変えてしまうなんて、やっぱり田んぼってスゲーなぁ! と思った次第です。 

もう1つ思ったことは、サーフィンでも買い物でも何でもいいんですけど、現代の趣味ってほとんどがそれ自体で完結していますよね。ま、場合によっちゃサーフィンに行って魚を捕まえてくるなんてことがあるのかもしれませんが、基本的にはその瞬間を楽しむことが目的で、それにお金を使っているんだと思います。

でも農は違うんですよ。やれば必ずオマケといいますか、収穫物が付いてくるんです。しかも人はそれを食べて生きているんです。これぞまさに趣味と実益!

生きていく上で本当に大切なこと。それを楽しく与えてくれるから、農は素晴らしいんじゃないかな〜。

そんなHさん一家も今では立派な小さな農家となって、ご家族みんなで田んぼを続けています。そんな様子を見るにつけ、農の魅力ってすごいんだな〜と実感します。なかなか人生変えちゃう体験なんてできないよね。

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小さな農家は子どもちゃんも大活躍です

そんな体験をぜひ味わって欲しい、と願いながら、毎年いろんなワークショップをやっています。「農泊まんきつプラン」でご用意している農業体験も、そんなステキな瞬間を味わっていただきたい、という目的です。

でも我が身を振り返ってみれば、ワタクシたちもHさんのことを言えないくらい単純ですよね…。

単純だから農家になって、日々の野菜の生長に感激する。

単純だから農家民宿をやって、お客さまとのふれ合いに感動する。

そうか、単純だから幸せな毎日を過ごしてるんだな〜。 よし、今こそ声を大にして言うぞー!

ビバ、単純!

そんな単純夫婦に会いに、そして人生を変えちゃうような体験をしに、『くらしの宿Cocoro』に遊びに来てくださいね〜。

みなさんにお目にかかれるのを楽しみにしていまーす♪

2 コメント

  1. senonichijo

    農業もいーですね!

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  2. kurashiCocoro

    senonichijoさん、コメントありがとうございます!
    そーなんですよ。農業いーんです。楽しいですよ~。

    返信する

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